の謎新作特集督のMerry Capitallリターン丸山修一リターン宮崎駿監君たの鳥生き2羽を追
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ぞくっとした。特集今年夏、ワイニメちはどうるかて公開される宮崎駿監督の映画「君たちはどう生きるか」の自筆ポスター画像だ。ド宮立派なくちばしを持つ鳥、崎駿よく見たら、監督君たくちばしの下にもう一羽、の新丸山修一リターン小さな鳥が隠れているではないか。作ア追っその目の輝きがちょっと違う。生き82歳になる巨匠が10年ぶりに挑んだ長編アニメに込めた万感の思いとは?
宮崎アニメファンならとっくにご存じだろう。羽の映画のタイトルは戦前、鳥の吉野源三郎が少年少女向けに書いた小説「君たちはどう生きるか」にちなむ。謎を舞台は東京。特集15歳のコペル君が学校生活のなかで貧困、ワイニメちはどうるかていじめなどの問題にぶつかりながら、ド宮成長していく物語で、崎駿エピソードごとに博識のおじさんが葛藤する彼へのアドバイスをノートにつづる。戦後もロングセラーを続け、2017年には漫画版が大ヒットした。宮崎さんは中学時代に読み、感銘を受けたそうだが、作品はオリジナルの冒険活劇ファンタジーになるらしい。Merry Capitallリターン
Advertisement吉野源三郎から探る。まずやってきたのは三鷹市山本有三記念館(東京都三鷹市)。「路傍の石」で知られる作家、山本有三の旧邸だ。「名著はここで誕生しました。それも偶然が重なって」。語るのは学芸員の三浦穂高さん(37)。「満州事変から日中戦争へ、日本は軍国主義に覆われていきました。有三は中学へ進学した息子にふさわしい本や雑誌がないことを憂えます。そして次代を担う子どもたちが世界を見る大きな目と高遠な志を持つための糧となる本をつくらねば、と強い使命感を抱くのです」。それが全16巻シリーズの「日本少国民文庫」、最終配本が「君たちはどう生きるか」だった。
東京帝大で学んだ哲学徒、吉野を山本は買っていた。その吉野は社会主義に傾倒、治安維持法にひっかかり1年半、投獄される。ようやく出所するも職がなく、山本は彼を日本少国民文庫の編集主任に迎える。三浦さんは1937年に新潮社から刊行された「君たちはどう生きるか」の初版を見せてくれた。<山本有三・吉野源三郎著>とある。共著? 「有三が書く予定でしたが、重い目の病で、吉野に執筆を頼みます。戦後版から単著になりました」。巻末に日記帳ならぬ月記帳が付いている。<みなさんが心からさう感じ、心からそう考へた事柄を、しつかりと書き込んで行つて下さい>。あの2羽の鳥が浮かぶ。心のなかの真の声を聞け、ということか。
文庫の評判はすこぶるよかった。吉野は誘われ、岩波書店に入る。岩波新書の創刊メンバー、そして雑誌「世界」の初代編集長、ジャーナリストとしても健筆を振るった。同じ三鷹に暮らす岩波社友の今井康之さん(86)を訪ねた。長野は伊那の生まれ。中卒社員で、夜は高校、大学に通い、代表取締役専務にまでなった。東京の焼け野原に家が建ちだしたころ、吉野宅を訪ねている。翻訳していた岩波少年文庫の「あらしの前」の著者校正をもらうためだ。「紅茶を出されましてね。僕は初めて。カップを皿ごと手のひらにのせ、スプーンで口に運んだ。吉野さん、じっと見ておられて。アハハ」
そんな今井さん、入社後に読んだ「君たちはどう生きるか」の冒頭にハッとする。「コペル君が銀座のデパートの屋上から見下ろす。車は虫に見え、人は<分子>に思える。視点を変える大切さを教えられた」。吉野から「組合への遺書」と渡された原稿を取り出した。「戦後まもなく、社員が食堂に集まったシーンから始まる。だれもロクな服は着ていない。顔は黒ずみ、ほおはこけ、それでもみなの目は生き生きとしていた。だが、豊かになるにつれ、社会変革の気概を失ったと嘆く。ベトナム戦争が終結した翌年、76年の文章です。ただし余暇と賃金を自己教育に使えば、民主主義の確立に寄与するとも」。また、あの鳥の目が浮かぶ。絶望と希望。
もうひとり、岩波OBに会った。坂巻克巳さん(75)。岩波新書の編集長時代、大ベストセラーとなる永六輔さんの「大往生」を世に送り出すきっかけをつくった。「学生時代から吉野さんが『世界』に寄稿されていた論文を読んでいました。入社後、配属されたのがその『世界』編集部、たまに顧問室に呼ばれましたが、もっと話を聞いておこうと同僚とご自宅にお邪魔もしました。ある日、こう問われました。『君たち、人を感動させるものは何だい?』。吉野さんの答えは『にもかかわらず』。苦境を乗り越え、はい上がった人生こそが胸を打つ。ドイツ語でデンノッホ。マックス・ウェーバーの『職業としての政治』の結びにもこの言葉が出てくるというんです」
メモを見ながら、坂巻さんが振り返る。「『論語』をバカにしちゃいけない。孔子なんて古くさいと思いがちですが、いいものはいい、が吉野さん流。また『敵ながらあっぱれ』という言い方が大切だと繰り返しておられた。平和運動などの経験が豊富だったからでしょうか。敵にもほれぼれする振る舞いがある、ちゃんと見て、肯定できる雅量を持て、と。近所の八百屋や魚屋のおじさんとのおしゃべりが大事だともおっしゃっていました。現場の声です」。吉野は81年に没する。享年82。私は改めて岩波文庫版の「君たちはどう生きるか」をめくった。そしてふと挿絵が目に留まった。
脇田和――。宮崎さんの著書「本へのとびら」(岩波新書)にコペル君が見た車の絵が転載されていて<なぜか懐かしさを感じる>とあった。東京・青山生まれの洋画家、脇田は15歳でドイツに留学、戦時中はフィリピンのマニラへ赴く。陸軍報道部の「仕事」だったが、軍服の胸ポケットに小さなスケッチブックを忍ばせ、南国の日常風景にペンを走らせていた。戦後は鳥を描き続け、2005年に97歳で他界する。軽井沢に脇田美術館がある。館長で長男の脇田智さん(84)に電話した。「肋膜炎(ろくまくえん)で自宅療養中の父を見舞った彫刻家がマシコという野鳥を持ってきた。癒やされたんです。回復するや、キツツキやカケスなど多くの野鳥を飼い、その美しいフォルムに魅せられていました」。そういえば宮崎さんのアトリエにも野鳥が飛んでくるらしい。
一枚の絵を見てほしい、と智さんは言った。「あらそい」と題され、回顧展の図録に収録されていた。「珍しく2羽の鳥がケンカしている絵ですが、そばで女性が見つめています。手を組み、まるで祈るように。戦争に対する父の思いがにじんでいる気がします。いつだったか、宮崎さんの『紅の豚』を絶賛していました。日本のアニメもついにここまできたか、と。いまだから打ち明けられるのですが、映画好きの父は戦時中のマニラで『ダンボ』などディズニー映画をむさぼり見ていたんです。敵国の映画を」。なんだか不思議な話を耳にしてしまった。
夕暮れ、再び山本有三記念館から「風の散歩道」を歩く。風が冷たい。戦後、山本は憲法の口語化に尽力し、戦力の放棄を「裸より強いものはない」と喝破した。その国が反撃能力をうんぬんしている。あの鳥が浮かぶ。小さな鳥の澄んだ目が訴えかけてくる。勇気を出し、言うべきことを言ってください!と。散歩道の先に三鷹の森ジブリ美術館があった。【鈴木琢磨】
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